うちのじゃなくてもアフターサービス。
この前お店に来てくれたお客様の話。
50代くらいの女性のお客様に包丁の砥ぎ直しを8丁お預かりして取りに来られた時に少しお話しました。
うちに頼んでくれるのは2回目でした。
「包丁大好きやき今まで砥ぎもずっと自分でしよったけどこの前砥いでもろうたらこじゃんとよう切れたきもう自分で砥ぐのやめた。」
良かったのかどうかはわかりませんが、うれしい。
「前によそに砥ぎに出したら機械でちゃーっとやって、はい、終わり。がっかりした。」
包丁大切にしてて自分できちんと砥いでる人には物足りないことでしょう。
「だからあなたに頼む時に『どうやって仕上げる?』って確認したろ?」
はい、うちは包丁は手砥ぎで仕上げます。
「本当に包丁が好きでこの前も包丁買ったけどあなたに砥いでもらった方がしばらく使った後なのに新品よりずっと切れる。」
次に買う時は是非当店でお願いします。
こういう仕事の仕方してて良かったなぁ、と思う瞬間です。
ちょっと浅いのがバレますけど、このお客様が帰られた後に心でガッツポーズです。
こんなふうに「自分で砥ぐのやめたきお願いね。」ってお客様もいれば、「せっかく手打ちの包丁買ったき。」って砥石も買ってくれてご自分での砥ぎ直しに挑戦される方もおられます。
どちらも道具を大切に思ってくれてる人。
そういうお客様とどれだけ出会えるか。
出会えた時にどれだけ応えられるか。
それからそう思ってもらえる方をどうやって増やしていくか。
そのために『砥ぎ直し』はとってもとっても大切だと思っています。売れたら終わりじゃいかんと思います。
砥ぎ直しはしない、よそ製の刃物は砥がない、なんてとこ多いし、砥ぎに持って行ったら「こりゃあいかんぜよ。新しいの買いや。」って捨てられた、なんて話も聞いたことがあります。
砥ぎながら使えばずっと使えるのが土佐の刃物のセールスポイントながやないがかえ。
高知では機械でしか砥がない鍛冶屋さんや砥ぎ屋さんが主流やし、うちも十数年前まではそうやって仕上げてました。
刃物まつりやZAKURIの砥ぎ直しイベントでさえ機械で砥いで終わりです。それで満足してくれるお客様も確かにいます。
けどねぇ…。
「きちんと砥ぎ代もらって手砥ぎで仕上げようや。」って提案しても受け入れてもらえませんでした。刃物まつりは客寄せのために無料砥ぎやし、ZAKURIも1丁200円。
「間尺に合わん。」やって。
もったいない…。
長く長く使えるいい刃物作れる腕持った鍛冶屋さんいっぱいおるのになぁ。
そのおかげで砥ぎ直しはじゃんじゃんうちに集まって来てますけど。
熱くなってしまいました。
長くなってしまいました。
お客さんにこんなこと言ってもらってうれしかったです、って書こうと思っただけやったのにね。
まぁ、これからもずっと砥ぎますきー。
どこの品でも錆びちょっても欠けちょっても柄が折れちょっても治してみますので、じゃんじゃん持って来てつかーさい。
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今年の春から造園業界に転職し、笹岡さんの鋏を購入させていただきました。
まさに職人の鏡ですね。その心意気にとても感激してしまいました。
大切に使わせていただきます!!
corbさんへ
うちのはさみを使っていただいてるようでありがとうございます。
「職人の鑑」は褒め過ぎです。腕の未熟さを必死で丁寧さで埋めようともがいてるだけです。まだまだ親父さんに頼りっぱなしの部分もたくさんありますし、足りないところ、まだ知らないところ、たくさんあると思います。
でも「より良いもの、より良い技術」を求めて行かなければ、とは思っています。「ものづくり」 に携わる者にとっては本来当たり前でなければならないはず。もちろんいろんな制約(時間やお金や)はありますが。僕も最近ようやく気付き始めた所なのでえらそうなことは言えません。ただ意識は持ってます。
「造園」もある意味ひとつの「ものづくり」ですね。お互いがんばりましょう。
鋏ともども今後ともよろしくお願い致します。