鍛冶屋日記

月別: 2017年6月

ちょっと思惑と違うことがいくつか続いて調子が良くないので、流れを変えに大阪へ行って来ます。

いの町観光協会さんから電話にてお誘い。
仁淀ブルー観光協議会さんから『大阪の海遊館へ売りに行きませんか?』ってお話があるんですけどいかがですかー?」

高知フェア的な観光PRイベントに物販もくっつけてくれるらしい。

ちょっと保留して考えました。
場所は海遊館のチケット売り場近く。人出はすごいだろうなぁ。けれど、お客さんの層はおそらく小さなお子様連れがメイン。あとは若い2人のデートの場所か。厳しい戦いが予想されます。

こういうイベント遠征を依頼された時の反射的な質問。
ペーパーラボさんは行かんが?」
岡山も東京も一緒に行くいの町の紙屋さん。乗り合わせて行けば交通費半分。さびしくもないし。
「ラボさんは行けんみたいです。利休さんが行く予定です。」
利休さんは今年『高知家のうまいもの大賞』を受賞した『けずり芋』を生み出した飲食店さん。

利休さん行くなら行こうかな。向こうで退屈することもないし。利休さんは現地で調理するための機材が多いろうき乗り合わせは無理やけど。

「行ってみる。」
いの町観光協会にそう伝えて数日後、本元の仁淀ブルー観光協議会さんから電話。
詳しい日程・スケジュール・条件その他の説明を受ける。

その中で残念なお知らせ。
「利休さんは行かないことになりました。仁淀川流域の市町村から行くのは笹岡さんだけです。」

飲食を生業とする利休さんにとって 大阪の保健所の縛りがややこし過ぎたようで。飲食店さんにとってはそんなところも県外遠征の妨げになるがやね。

想像してなかったけど一人ぼっちになりました。

行くって一回言ったものを取り下げるはずもなく。一人ぼっちの大阪遠征が決まりました。

7月8日(土)9日(日)の2日間。
大阪の海遊館にて仁淀ブルーとともに出店です。

いつもよりさびしく厳しい戦いが予想されますが、いの町観光協会さんが救いの手を差し出してくれたので、やれるだけやって来ます。ありがたい救いの手。

行ってみる、やってみる、は得意です。
行ってみんとわからんこといっぱいあるし。
どんな戦いでも戦ったその先にえいことがある気がします。

それでは大阪のみなさま、7月8日・9日よろしくお願いします!

あ、その前に今週日曜日7月2日(日)は帯屋町でおかみさん市。
20連勤確定。乗り切ります。

伝統工芸の危機的状況に思うこと。
あっちもこっちも。
ずっと思ってきたことだけれど、ここ1ヶ月くらいで次から次へといろんな側面から考えさせられることがあったのであらためて書くことにしました。

はさみ屋は今、研修生を受け入れています。4月に1人増えて2人の鍛冶屋志望者とともに働いてます。後継者育成。

伝統工芸としての産地を維持するために、また後継者を作っていくためにに何が必要か。単純なことです。稼げる仕事にする。これしかないと思います。

後継者育成のための補助金をもらってます。研修制度がある、そのための補助金がある。たしかに受け入れる側、飛び込む側にはありがたいこと。充分利用させてもらってます。でも、根本はそんなことじゃない。

それから売れなくなった伝統工芸品を今以上に売って行くために「技術の革新・研鑽」大事なこと。
けどね、技術はあるがよ。鍛冶屋さんも紙漉きさんも。持っている技術を目一杯発揮する機会をもらえてないだけです。何百年やってきたものの上に出来上がった伝統工芸。誰彼真似出来んし、3年や5年で全部身につく技じゃない。僕だって20年やってきたけど全然足りません。

そんな技術を身につけた職人さんがたくさんいて、なのに後が生まれて来ない。なぜか。稼げないから。もう少し丁寧に言うと技術と時間と労力の割に稼げてない。

つまり業界が一番に考えるべきことはその技術をどうやって高く売っていくか。
今の流通のシステムにおいてこれが出来てない。
問屋のみなさんお世話になっております。
それでもやっぱり見ていて思います。

この流通のシステムが産地を潰していきゆう気がします。産地を支えて来たシステムが今は潰してしまいそうになってます。
安い値段で朝から晩まで流れ作業のように作り続けた結果、後継者が生まれない今です。

40代の鍛冶屋さんが言いました。
「親父が付けた値段が安いがよー。」
その年齢なら親方と相談すべきです。
「その値段じゃやれん。もう少し上げよう。」
それでも聞き入れてもらえないなら親父さんに内緒で合う値段を付けて売ったらいいと僕は思います。その辺の采配はふるって良い年齢です。でも、出来てない。これは鍛冶屋個人の問題。でも、たぶんどこも似たり寄ったり。

買う側の問屋さんは言ってくれます。
「しっかり手間に合う値段付けてください。」
でも、値上げしたら安く作るライバルに注文を奪われた過去のトラウマ、自分は経験なくても聞こえてくる業界のよくある話。作り手が減って辞めた鍛冶屋さんの分の注文が残ってるところに集中して忙しくなっている売り手市場になっても(現状はそうらしい)、問屋さんの縛りから抜け出せない職人たち。抜け出そうやー。

刃だけ作って柄付けや箱入れは問屋さん任せの状態。素晴らしく切れる刃物が作れても柄が付いてなかったらお客さんに届けれんよね。問屋さん依存。卸の仕事を切る訳ではありません。並行してやればいい。柄を付けて箱に入れて、小さくてもかまんき販売ルートを自分で作らんと。
これ、「やりがい」が生まれるで。いいもん作ろうって絶対思うで。

お客さんに届ける形にまで出来て初めて品質の向上を目指したり、自社の自分のブランディングの必要性を感じたりするがやと思います。
まじで、農業の6次産業化、見習おうよ。
各伝統産業に従事する職人さん。
危機感ないかなぁ。現状に満足やろか。あきらめじゃないよね。
この部分が今のままで後継者生まれて来るかなぁ。
以上は職人さんへの提言。

これから業界団体とか問屋さんに考えて欲しいこと。
同じです。今の職人さんたちの技術をどうやって高く売っていくか。職人さんたちに技術はあるのです。

そのために職人にスポットライトを当てる。その人が作ったことをしっかり見せる。その分責任も持たせる。
職人に対して「もっと良いもの出来ん?。」「もっと丁寧に仕上げてや。」求めていい。厳しい目を持って厳しい要求をして。それに応える品は高く買い、高く売る。

安く仕入れる努力じゃなくて高く売るための努力。

手間をかけても手を抜いても同じ形なら同じ値段。あの人の品とこの人の品、同じ寸法なら技術関係なく同じ値段。良いもの生まれて来んよねぇ。
中身はどうあれ、大量に必要だった時代はそれでよかった。じゃないと間に合わんかったと思います。

時代は変わってますよー。

しっかり仕事をする、丁寧な仕事をする、そうすれば同世代の人たちに遜色ない収入を得られる。週休2日で、祝日も休んで、夏期休暇なんかもあったりして。なんなら職人の方が休みが多くなったりして。
それが実現出来たら後継者は自然に出来てくると思います。

つまりは単価アップです。

たくさんの仕事があってもたくさんの労働時間を費やさないとそこそこの収入が得られない、そんな状況はブラックです。自営業はだいたいブラックやけど。

業界がやるべきことは土佐の刃物全体のブランド化。ロゴ作ってステッカー貼り付けるより前のブランド化。単価を上げるための戦略。今治タオルとか見たらいいと思うけどなぁ。違う業界見たらお手本いっぱいあるでね。

職人は歳を取って引退したり廃業したりで終わり。やらんでよくなったから辞める。
でも作り手が減って消えていって困るのは問屋さんやと思うけどなぁ。動くべき時やと。

はさみ屋の場合は僕が入った20年くらい前から問屋さんからの注文がどんどん減って、仕方なく今のやり方に移行して来ました。今のやり方って言うのは上に書いたようなこと。
どうやって直販のルートを増やすか。(これだけで1つ売れた時の利益率は上がります。つまりは単価アップ。より手間もかけられるしね。)
どうやって自分をブランディングしていくか。直接売るには見つけてもらわんと、見つけてもらってその上で選んでもらわんといかんきね。

この10年ずっとそればっかりやり続けて来た結果、前途洋々。明るい方が未来です。そして今では後継者育成の事業に手を上げることが出来る状態を作れてます。2人受け入れ中。鍛冶屋さんを生み出せたらいいなぁ。

ちょっと古くさい考えにイライラしたり、どうして見えんがやろってがっかりしたりすることが続いたので思いっきり書いてみました。

これで何か変わる訳じゃないし、業界のシステムをぶっ壊せるとも思ってないけど、うちの研修生には業界のシステムの枠の外で生きて行く力も身につけて欲しいと思ってます。それはずっと伝え続けてます。
そういう職人を育てんと絶対終わる。

だから、どっか別の場所でもそういう職人さんとか問屋さんとか小売屋さんが生まれたらいいなぁ。

2017年6月
« 5月   7月 »
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  
最近の記事 最新コメント