鍛冶屋日記

カテゴリー: 仕事

「気概がある。」って誉められたり「ぶれちゅう。」って批判されたり。

「こんなことに協力してください。」って頼られたり「これからはもっと大きな視点で見てほしい。」って期待されたり、それを横で聞いていた人に「あなたには無理!」って言い切られたり。

評価はいろいろあっておもしろい。それで気分がよくなることはあってもへこんだりはしない。幸せ、且つしよい性格。結果出てからへこめばよい話やもんね。

ちょっと特注品のオーダーが続いたのでご紹介します。
まずは、うちの植木鋏(大久保)の形で刃が15センチの長いやつが欲しいってオーダー。葉刈り用ですね。群馬県へ。

次はうちの京型の植木鋏の刃をベースにした切箸(きりばし)のご注文。

持ち手が輪っかになってない切箸を使う植木屋さんも全国的に見ると意外に多い。時々ホームページからご注文をいただきます。これは北海道へ。

次は牛の爪切り。
砥ぎ直しに持って来られて
「これと同じ形で出来ますか?」
「出来ますよ。」

左が見本、右がはさみ屋製。

畜産農家さんかと思いきや、農業大学の方でした。

あとは京都のお取引先から左利き用の花鋏の注文もらったり
「力任せに使われてどうしても持ち手のとこが曲がってしまうんやけどなんとか改良出来ん?本当は鋸で引いてほしいくらいの太さのものまで鋏で切りはんねん…。」という花屋鋏。

親父さんに相談して、足(持ち手)の部分にも焼きが入る鋼を鍛接して硬くしてみました。見本を送ると合格で、あらためて数丁ご注文。

メーカー(鍛冶屋)だけでなく卸も小売りも個々の小さい需要に応える感じになって来ました。

よい傾向だと思います。
大量生産、価格競争では勝てません。
強みを活かすべし、です。

最近は「七色、七色」ってイベントについてのことばかりのブログになってましたが、こんな感じできちんと仕事もしてますので、ご安心ください。

イベントだって自分の仕事に繋げるためにやりゆうがやしね。

暑いけれど、眠いけれどしっかり作りますので、ご注文お待ちしております。

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次の日。

お昼にとっしゃん家でアヒアンのイスラエル料理をごちそうになってから再び工場へ。

どんなナイフを作りたいかを聞いてオヤジさんにアヒアンを預けました。オヤジさんあっさり引き受けてくれます。こういうとこやっぱりでかいね。

教える職人と教わる旅人。

鋼材を焼いてハンマーで叩いて延ばしてざっくり形を作ってからグラインダーで成形。さらに細かいバフで磨くとこまでアヒアン自力。

焼き入れはオヤジさんがやりました。

その後また習いながらアヒアンが自分で機械で砥いだところで

僕の出番。砥石で刃を付けて出来上がり。

「出来たよ。」って渡してあげるとうれしそうな笑顔。

「スゴイ…。イチニチデ…。」
自分のヒゲに刃を当てながら
「オー…、シャープ…。」

本当にうれしそう。

なぜだかアヒアンナイフは7丁も出来ていたので最後の2つは仕上げ砥ぎも自分で。

「むずかしい?」

「ムズカシイ。デモ、ムズカシイハイツモオモシロイ。」

苦労しながら刃付けも終わり、最後に椿油で拭き上げてアヒアンナイフ7丁完成。

ケースを付けて「どうぞ。」って言ったら「ゼンブ?」って。

「イスラエルに持って帰って友達にあげればいい。これから旅の途中でお世話になった人にプレゼントすればいい。『ボクガツクリマシタ。』ってね。」

「オー…。アリガトウ。」

仕事を終えて再びとっしゃん家で晩ごはん。
さっそく2晩泊めてくれたとっしゃんにナイフをひとつプレゼント。めちゃ誉めてくれて喜んでくれたね。

その日は8時から用事があったのでお別れです。

「アヒアン、I have to go….」

握手しました。ハグしてくれました。

「アー、ササオカサン、ホントニスベテノexperienceガオモシロイデシタ。アリガトウ。」

「いえいえ、どういたしまして。じゃあね、バイバイ。」

クールにお別れしました。
うれしそうなはにかんだ笑顔がめちゃくちゃかわいいやつでした。いい子でした。

その晩、もう二度と会えんがやぁ…って思ったらさびしくなりました。

翌朝も仕事しながらずっとさびしいさびしいって思ってました。

お別れの時に

「俺も楽しかった。またおいで。」

ってきちんと伝えればよかったなぁ…。

元気でね、アヒアン、またおいで。

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来ました。

「名前は?」

「アヒアン。」

ユダヤ人・189㎝・デカい・23歳。

月曜日のお昼にやって来て半日仕事をじっと見てました。

「Try?」

「ハイ。」

テントを担いでヒッチハイクで日本縦断している(西表島から沖縄・九州・山口・広島を経て愛媛から高知に入って、この後北上するらしい)アヒアンに聞きました。日本語は充分通じます。

「今日はどこで寝る?」

「ンー、キマッテマセン。」

一人の友達の顔が浮かびました。神戸出身、いのへ農業しに来て古民家に一人暮らししている「とっしゃん」です。この前アルゼンチンからの旅人を受け入れていた素敵な友達。

「イスラエル人泊めちゃってくれん?」
「まじっすか!?いいっすよ。」
あっさりOK。宿確保。

晩はちょうど飲み会の予定があったので一緒に行って晩ごはんとビールとワイン。
宗教上の理由で食べられないものがいっぱい。エビ・タコ・イカはダメ。
「ウミノモノハサカナダケ。」
「オニクヲタベテ3ジカンハミルクカラノモノ(乳製品・バターを使ったお菓子も)ハタベナイ。」

日本人なら言うはずです。

「エビおいしいのに…。」

それからとっしゃん家へ預けに行って3人でしばし語らいました。

イスラエルには兵役が3年間あること。女の子も2年間あること。それを終えたらだいたいみんな長い旅に出ること。イスラエルで忍術を習ったこと。日本に来て3ヶ月半。高知に来たのは日曜市を見るため。
「オオキイマーケットハモノモヒトモイツモオモシロイ。」
高知の後は香川で讃岐うどんを食べてから神戸の教会を目指し、さらに北海道までヒッチハイクで行って飛行機で戻って富士山に登ること。9月にイスラエルに帰って10月から大学に行くこと。

異文化聞くのとても楽しい。

こんな旅を経験してダメな大人になるはずがない。

2人でとっしゃん家まで歩く途中でアヒアンが静かに言いました。

「アシタハ、ナイフツクリタイ。」

あ、明日も来るがや。

「オーケー。お昼に迎えに行く。」

続きます。

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久しぶりに仕事のお話。

昨日、遠く本山町から4人連れのお客様が来られました。

『土佐和紙工芸村くらうど』さんに置いてるはさみ屋のショーケースを見てくれてうちのことを知ってくれたお客様でした。

その中の一人の方(女性です。めずらしい。)がとっても気に入ってくれていて

「気になって気になって『くらうど』へ3回見に行った。今日はどんな人が作りゆうか確かめに来たがよ。」

で、包丁3丁お買い上げいただきました。

まちかど市効果です。素晴らしい。

もっと素晴らしいのはこの後の話。

「はさみ屋さんの工場を目指して来よったけど場所がわからんで迷うてしもうて畑仕事しゆう人に尋ねたら、『知っちゅうき案内しちゃお。』って車でここまで先導してくれた。」

枝川から。朝倉駅経由。

素晴らし過ぎ。すごいでね。

残念ながら案内してくれた方には会えてません。誰やろう。

迷って困ったお客様にとっても新しいお客様に出会えたはさみ屋にとっても、本当にありがたいことです。

恩返しが必要です。

この親切な人が誰だったのかを探しつつ、直接恩返し出来んなら恩送り。違うところへ返してもえいはず。

返さんといかんし、たぶん返ってきてくれるしね。

本当にありがとうです。

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この前書いたはさみ屋のテレビ出演の件

全国的には日曜日に放送されたようで、さっそく大阪からお電話でいのししナイフの注文をいただきました。テレビってすごい。

電話番号とか住所とか何の情報もなかったので「仁淀川、鍛冶屋、で104で調べた。」って。よく辿り着いてくれました。ありがたい。

高知での放送はまだですがテレビ局から番組のDVDを届けていただいたので見ることが出来ました。

取材の時に「今回は脇役でした。」って書きましたが脇役どころか全カット…。親父さん一人で仕事してました。僕の作業風景も撮ったし夢枕獏さんとも話したのに。テレビってすごい。

高知での放送は5月13日(日)午後4時25分です。『遠くへ行きたい』ご覧ください。出てないけど。

今日から3日間、4日(金)、5日(土)、6日(日)、おかみさん市へ出店です。

帯屋町へ観光客のみなさんを待ち構えに行ってきます。

出会えますように。

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先週から若き鍛冶屋さん(26歳)がうちの工場に勉強に来てます。長野から。2週間。今回で三度目の修行。高知まで来るって意欲がすごいと思います。仕事を教われる環境にないという悩みの方が強いのだろうけど。とっても真面目にやってます。

修行ついでに29日(日)の『職人ストリート』にも一緒に出てお手伝いしてもらいます。

心意気がひとつ増えた。

イベントでのお客さんとのやりとりや商店街活性化みたいなものにも触れてくれたら勉強になるはず。
工場から外に出たはさみ屋を見てどんな感想をくれるかなぁ。

ついでにここで29日に課される『七色のミッション』の全貌を明かしておきます。

・ヒゲそりジャー(散髪職人)
・たっかいたっかいところに登れ!(植木職人)
・この木なんの木?(植木職人)
・元気な声で3つ売れ!(ポン菓子職人)
・1㎏のしょうがを量りとれ!(根菜職人)
・包丁シャキーン(鍛冶職人)
・これ何切るが?(鍛冶職人)

の七つです。

楽しそうでしょ。

クリアしに来てください。

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一昨日、外回りの一日に吾北までドライブしたついでにある作り手さんに会って来ました。

以前にも会って話したことのある、ものづくりをきちんとしている若い人。

前に会った時より忙しくなって名前も売れて仕事も選んでる感じ。

ダメもとですが、心意気があるのはわかっているので『職人ストリート』の話を出して誘ってみました。

「今はそういう場所に出て行くより、がっつり作りたいがです。自分が作りたいものを。」って返事。

すごく気持ちがわかる。

工場にこもって作り込むことだけでは許されないとこまで来てしまった僕にはちょっとうらやましい。

でも怯まずに『職人ストリート』の内容と自分の思いを伝えて時間あったら覗きに来てって言いました。

ちょっとは興味を持ってくれたと思います。

前回会った時は

「一人でやるのは大変やろうけど自分の目指すものを自分が思うように作れていいなぁ…。」って思いました。

今は違う。
そういう気持ちはなくなった。

今うらやましいのは、あちこち出て行くことなく宣伝とか余計なことに時間を使うことなく、商品のクオリティーだけで勝負できる環境まで行けてるように見えること。

仕事の質でいろんなものを引き寄せる。理想。

最近「おろそか」って言われて凹みました。
そう見えるかもしれんけどそうじゃないよって思いながらも、凹むってことは自分でも思うとこあるがやろうね。
じゃなければ「そんなことないよー。」って堂々と反論できたはず。

でも彼と話して確認できたのは

「いろんなことに時間とられて出来上がる数には影響があってオーダーしてくれたお客さんを待たせてしまったりしゆうけど、ひとつひとつの品質は決しておろそかにしてないよ。」ってこと。

自分とこで作ったもの、作り方が最高だなんて未だかつて思ったことないけど、今自分が知っていてやるべき作業、気をつけるべき工程は目一杯やれゆう。抜いてない。

2年と半年分の相手の進化と同時に自分の変化にも気づくことが出来ました。

今の目標は、作るのに没頭するにしろ外向けて発信するにしろ、やりたいことを見つけた時にやれるスペースを空けること。

今はいっぱいいっぱいです。

いっぱいいっぱいの中がんばるのも必要と思ってやってきたけどそろそろ次のステージへ、とかまたかっこつけて考えています。

余計なことに時間とられて忙しくて悶々としてて愚痴っぽくなりそうでブログも書きづらくなってましたが前向きになれました。

会いに行って話出来てよかったです。

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昨日はうちの工場にテレビの取材が来ました。

『遠くへ行きたい』って番組。

夢枕獏さんが仁淀川周辺を旅する番組。その中ではさみ屋に立ち寄ってくれました。

が、僕は脇役。

親父さんが仕事してる姿と夢枕獏さんと親父さんが話してる場面を撮影。
最後にちょっとだけ紛れ込むことに成功。

テレビの人が帰ったあと観光協会せいちゃんから電話がありました。

「テレビどうでした?」

電話の声が半笑いです。

なんで知っちゅうがやろ。

(あ、観光協会がうちを紹介してくれたがや。今回脇役やけど俺が築いてきた人脈の成果や!)

って一瞬脳みそが都合良く回転したので聞いてみたら

「いや、テレビの人が持ってきた行程表に笹岡さんとこが載ってたんで…。仁淀川についてはいくつか紹介したんですけど。」

つまりテレビの人が自力で見つけてくれてた訳です。

紹介じゃなかった。
人脈じゃなかった。

せいちゃんにカレー奢っちゃらないかん、ビール飲ましちゃらないかんとか思ったのに。取り越し苦労。

まぁ、そんな心の中の浮き沈みもすべてせいちゃんには伝えたので次のチャンスにはきっと紹介してくれることでしょう。

仁淀川を撮影に来ようが土佐和紙の取材に来ようが

「いい鍛冶屋さんいますよ。」って。

そん時は主役。

期待して待ちよります。

今日は餅つき。

(お知らせ)
『遠くへ行きたい』
春の高知~清流仁淀川巡礼

放送日:4月29日(日)午前7:30~8:00
読売テレビ
(高知では放送されてない番組なので日時は未定ですが6月以降に放送する予定だそうです)

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「AB型です。」って言ったら
「お世話好きでしょ。」って。

ABにそんな特性があるとは知りませんでしたがそうなのかもって思いました。

先日、食品に関するセミナーを段取りました。そんな立場。めんどくさいにゃあって思ったことは内緒です。

段取るだけでは飽きたらずセミナーにも出席。
ブログを書く暇もないほどめちゃくちゃ忙しくなっててかなり疲れてたので
「なんで俺がこんな話聞かんといかんがよ。関係ないじゃん。各自でしっかりやってくれればいいのに…。」って心の中のブツブツは隠して、誰よりたくさん質問したりして、セミナーは無事終了。

みんなのためになりますように…。

後日、セミナーの講師の先生(高知農政事務所の方)が「この前答えられなかった質問へのお答え」と「よりわかりやすいパンフレット」を持ってわざわざはさみ屋へ来てくれました。

「ありがとうございました。」って言ったら
「鋏見せてください。」って。

そして、お花の鋏をご購入。

「母がバラをたくさん育てているのでプレゼントに。用事のついでみたいになってごめんなさい。」

あら、繋がった。
全然ついででよいです。

あの日の心の中のブツブツが顔に出てなくてよかったです。

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今日、工場の大掃除したら年末恒例の麻雀大会です。
7人集合する予定。明日の朝まで遊ぶにはちょっと睡眠が足りてませんが、集合時間の8時に帰れるようにがんばって働こうと思います。

この前、うちのお店に来てくれた若き植木屋さん。

高知出身で現在は山梨へ植木屋修行に行ってるそうです。植木屋歴三年目くらいでそろそろ道具も揃えていきたいってことで里帰り中にはさみ屋へ寄ってくれて植木鋏を買ってくれました。

「ブログ書いてますよね。見てますよ。」って言われて少しだけドキッとしながら

「ありがとうございます。」

昨日おかみさん市で包丁を買ってくれた男性のお客様。こちらも東京から里帰り中。

「ブログ書いてますよね。読んでます。」

そうながやー。
「ありがとうございます。」

今日来てくれたこれまた若い植木屋さん。
出身は愛媛県で今は神奈川県へ植木屋修行に。里帰りついでに高知へ回ってはさみ屋へ。ありがたいことです。いっぱい買ってくれました。
こちらはブログの話は出なかったけれどホームページではさみ屋を見つけてくれたそうです。

ネットの威力を思い知ります。

それから若い世代の植木屋さんもきちんと育てられているんだなぁ、って思いました。しかも遠く県外へ修行に出て頑張っています。すごいなぁ。いつの日か帰って来て高知の職人シーンを盛り上げてもらわんといかん。

そんな若い職人さん達と接すると鍛冶屋業界の自分の後の世代のことを真剣に考える今日この頃です。

本当は業界なんてどうでもいい。
ただ、これから先買ってもらったうちの刃物、俺が仕事出来んなったら誰が面倒見るがやろ、って思います。

繋げたい。

それが自分の息子じゃなくてもいいから繋げたい。仕事を選ぶのはやつらの自由。
もちろん自分の息子が一番すんなり行くがやろうけど。

本当にそう思う。

それには自分がきちんと稼がんといかん。じゃないと後の世代は鍛冶屋さんになれません。

本当にそう思います。

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